犬のSCC(扁平上皮癌)

症例

8歳3ヵ月 ラブラドールレトリバー 避妊雌

来院理由

左顎に腫瘤を発見した。食欲はあるがよだれが増えている。

身体所見

下顎に扁平状の腫瘤が認められ、一部は自壊していた。

体表リンパ節の腫大は認められなかった。

図1 初診時 外貌

検査

【血液検査】

・明らかな異常なし

【レントゲン検査】

・胸部および腹部に明らかな異常なし

【超音波検査】

・胸部および腹部に明らかな異常なし

【病理組織検査】

・鎮静下にて腫瘤の一部を採材した。扁平上皮癌という結果であった。

【CT検査】

リンパ節及び他臓器への転移は認められなかった。

治療方針

口腔内扁平上皮癌は局所浸潤性が強く口周囲の骨を破壊するため痛みを伴うことが多く、また採食困難や腫瘤が自壊することで悪臭の発生、出血が認められるなど生活の質が大幅に下がる腫瘍である。その一方で発見時に転移をしていないケースも多く、手術を乗り越えれば痛みや採食困難から解放され、腫瘤が小さいものや特に口の先端にあるものでは完治できるケースもある。この子の場合は大型の腫瘤でかつ口の奥にあったため完治の可能性は少なかったが生活の質の改善も目的として片側下顎全切除術+もう片側の吻側(先端側)下顎部分切除術を行った。

手術時の腫瘍の状態
下顎骨と残す皮膚、粘膜を分けている

顎の関節とその周りの筋肉も切断することで顎骨の内側が確認できるようになる

顎骨の内側の血管は確認しにくいため、不要な出血を避けるためにも視野を確保しながら血管を確認した。顎動脈を結紮し、下顎を体から外していく

縫合後
切除した下顎と腫瘍
下顎リンパ節、内側咽頭後リンパ節も切除し、転移の有無を確認した

経過

病理検査結果「扁平上皮癌」

腫瘍は完全切除されており、同時に摘出したリンパ節にも腫瘍細胞は認められなかった。

しかし術後約2か月半で左下顎に再発が認められた。再手術、放射線療法、分子標的薬での治療を提案し、分子標的薬にて治療を行ったが術後約5か月後に永眠した。

獣医師からのコメント

検査結果で完全切除と診断されていても扁平上皮癌の特徴から再発する可能性は高いです。今回も顕微鏡でも確認できないくらいのわずかに残存していた腫瘍細胞が再増殖してしまったと考えられますが完全切除の場合には年単位での生存期間の延長や初期の段階での外科切除が行われた場合完治の可能性もあります。当院では口腔の腫瘍に対して希望に沿った治療プランの提案、手術も行っておりますので同じ症状でお困りの方は一度ご相談にいらしてください。

担当獣医師のお名前

小島 大輝

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次
閉じる