眼瞼結膜に発生した扁平上皮癌に対する眼球摘出術

症例

ブリティッシュショートヘア、去勢雄、14歳

来院理由

左眼の内側から赤いものが広がってきており、出血もするようになった
他院にて原因不明と言われ、2ヶ月治療したが改善なく悪化しているためセカンドオピニオン

身体所見

左眼の内眼角に結膜の不整部位あり

図1:左眼結膜の不整部位
図2:角膜への付着なし

検査

【血液検査】
・腎数値の上昇

【レントゲン検査】
・異常なし

【超音波検査】
・肥大型心筋症、僧帽弁前尖の収縮期前方運動
・左眼内眼角の奥より組織増生、眼球内の一部が不整に肥厚

図3:心筋壁の肥厚を確認
図4:僧帽弁前尖の収縮期前方運動と血液の乱流
図5:軽度の左心房拡張
図6:眼球内の一部が不整に肥厚している

診断

  • 眼球腫瘍疑い
  • 肥大型心筋症:Stage B1-2
  • 慢性腎臓病:Stage2

治療方針

  • 眼の病変は視診および経過より悪性腫瘍を疑う
  • 超音波検査にて腫瘍の広がりが大きいことが判明したため、眼球の温存が難しい
  • 今後、眼の病態が進行すると、出血が悪化したり、痛みが酷くなる可能性がある
  • 麻酔前検査にて様々な基礎疾患が見つかったため、麻酔リスクがある

上記を踏まえ、飼い主様と相談の結果、麻酔を複数回行わずに以下の治療方針を選択

術式:経眼瞼眼球摘出術

図7:眼瞼結膜の重度浮腫が見られ、全体が腫れている
図8:瞬膜を外側上眼瞼に固定してから、眼球を摘出
図9:眼窩内を綺麗にし、縫合

経過

病理検査結果:扁平上皮癌

  • 結膜に発生していた組織は悪性腫瘍であり、結膜に発生するのは稀な扁平上皮癌
  • 腫瘍は完全に摘出できているが、周囲組織の脈管に腫瘍細胞が確認
  • 扁平上皮癌の遠隔転移は一般的に可能性が高くないものだが、今後も注意深い観察が必要

術後14日後:心臓および腎臓の数値は安定しており、経過良好のため抜糸

担当獣医師:萩原 祐太郎

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