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暑い時期には、特に使うことが多い保冷剤に以前は多く使われていた「エチレングリコール」、そして、家庭に必ずある「洗剤」を誤って口にしてしまった際の危険性についてお話します。
『保冷剤(エチレングリコール)』を食べてしまうと?
最近の一般的な保冷剤は凍らせるとカチコチに固まりますが、一昔前には冷凍すれば冷たくなるものの、ゲル状やシャーベット状のまま完全に固まらないタイプの保冷剤が流通していました。こういったタイプの保冷剤には、エチレングリコールと呼ばれる有毒物質が含まれていました。エチレングリコールは動物ばかりでなく、人間にも毒性があるため、日本では近年、赤ちゃんの誤飲事故を防ぐために、保冷剤に使われることはなくなりましたが、古い物や海外製の保冷剤には今でも注意が必要です。
エチレングリコールは非常に甘い香り、味がすると言われており、これが誤食を誘発する一因と考えられます。
動物がエチレングリコールを摂取すると、最初はアルコール摂取に似た、ふらつきや運動失調、元気減退、嘔吐などの症状がみられます。時間の経過と共に、体内でエチレングリコールが分解され、その産物が酸性血症、低カルシウム血症、そして最も大きな腎障害という問題を引き起こします。体重当たりで考えた時、猫はより少ない量で中毒を起こすと言われています。
エチレングリコール中毒では、特徴的な尿路結晶・結石が形成され、これらが腎臓に沈着することでも腎障害が進行していきます。この変化は摂取後数時間という早い段階から始まると言われています。
また、エチレングリコールでは、他の多くの中毒物質に対する治療でも行われる、吐かせる処置の適応が摂取から1時間以内とされています。吐かせることができなくても腎障害が起こる前であれば、中毒に対する治療を行うことはできますが、できる限り吐き出させて取り除くことができれば治療成功の可能性はより高くなります。さらに、腎障害が起こってしまった場合は、回復の見込みは極めて低くなります。できるだけ早い段階での治療が、その子の命を守ることに直結しますので、エチレングリコールの誤食が疑われる場合には、速やかに動物病院を受診する必要があります。
エチレングリコールは自動車の冷却液に現在でも含まれているため、ガレージや自動車工場での事故にも注意が必要です。
固まるタイプの保冷剤は、エチレングリコール中毒の危険性はないものの、誤食すると、使われている高吸水性ポリマーが水分を吸って膨らんでしまったり、外装の不織布が詰まってしまったりすることで腸閉塞を起こす危険性があります。中毒の心配がないからといって安全とは限りませんので、夏の暑さ対策で用いる場合には注意しましょう。
『洗剤』を食べてしまうと?
食器用洗剤、洗濯洗剤、掃除用洗剤など、家庭には様々な種類の洗剤が置かれています。
これらを誤飲して起こる問題の多くは、その成分から来る刺激に由来するもので、嘔吐やよだれ、下痢、食欲不振、舌や口腔粘膜の損傷(潰瘍)などが起こります。また、飲み込んだ際、あるいは吐き戻した際に、ドロドロとした洗剤が気道に入ってしまい誤嚥性肺炎を起こす危険性もあります。洗剤が身体についてしまうと、皮膚炎も起こる可能性がありますし、動物たちはこれを舐めとって除去しようとするため、口にも入れてしまい複雑な状況に繋がる可能性があります。
最近は、ボール状・タブレット状に小型化された洗剤も珍しくありません。こういった洗剤は濃縮されており、より少量で有害作用が起こる可能性があります。
犬や猫が洗剤をいたずらしてしまった場合、皮膚に付着したものについては、舐めとらないようエリザベスカラーなどで保護をしながら、早急に洗い流した上で、動物病院で皮膚の状態を診てもらってください。
舐めたり飲んだりしてしまった場合には、早急に動物病院を受診しましょう。病院では必要に応じて、口の中の洗剤を拭い取ることはありますが、先述の通り誤嚥の危険性があるため吐かせる処置は行えません。主な治療は、点滴や吐き気を抑える治療で、必要に応じて痛み止めも用いられます。肺炎が起こってしまうと時に命の危険性もあり得ますし、口腔粘膜の潰瘍が著しい場合には、回復するまで鼻から食道にチューブを通しての栄養サポートが必要となることもあります。
洗剤は生活の必需品ゆえ、動物たちが接触する危険性は、今回のシリーズで取り上げたどの中毒物質よりも高いと言えます。実際、私たちも食品の誤食と比べると洗剤の誤飲を診療する機会は少ないのですが、身近に必ずあるものとして、その危険性を知っておいて頂きたく思います。
今回で、『犬・猫が口にすると危険なもの⚠️』をテーマにしたシリーズは一旦終わりとなります。ただ、取り上げていない身近な中毒物質はまだまだ沢山あります。誤食を癖と諦めてしまう飼い主様も少なくありませんが、その結果、最悪の場合には命を落とす危険性のあるものも少なくありません。決して簡単なことではありませんが、犬や猫を大切な家族として迎え入れたからこそ、今一度、生活管理や躾などを見直して頂きたく、本シリーズがそういったきっかけとなれば幸いです。また、実際に誤食をしてしまった際には勿論、未然に防ぐための生活管理の方法についての相談も当院では受け付けております。お困りの際には、遠慮なくご相談ください。





