胆嚢粘液嚢腫

症例

年齢:12歳3か月齢
動物種:チワワ
性別:去勢雄

来院理由

元気消失、食欲低下および下痢を主訴に来院した。

検査

一般身体検査にて脱水所見を認めた。血液検査では、腎数値の軽度上昇、リン(P)の上昇、ALPを主体とした肝酵素の上昇、総ビリルビン(T-Bil)の上昇、低血糖、CRPの上昇および白血球数の増加を認めた。
腹部超音波検査では胆嚢粘液嚢腫を認めたが、総胆管の拡張は認めなかった。
以上の検査所見から、胆汁うっ滞に伴う肝障害と診断した。

治療方針

まず、脱水の改善を目的として点滴治療を実施した。しかし、翌日の血液検査では肝酵素およびT-Bilのさらなる上昇を認め、病態の悪化が懸念された。
そのため、内科治療のみでの経過観察は困難と判断し、急遽、外科的に胆嚢摘出術を実施した。また、術中に総胆管の疎通性を確認した。

図1:胆嚢の肉眼所見
図2:胆嚢の肉眼所見
図3:胆嚢摘出後
図4:総胆管フラッシュ

経過

術後4日目には元気および食欲の回復傾向を認め、術後7日目(第8病日)に退院した。
血液検査では、肝酵素の改善には時間を要したものの、徐々に低下傾向を認めた。
特にT-Bilは術後経過とともに改善し、第17病日には基準範囲内まで低下した。
さらに、第42病日にはALTおよびALPの改善を認め、一般状態も良好に維持されている。

図5:術創

血液検査の推移

スクロールできます
検査項目
(正常値)
第2病日
(手術日)
第4病日第8病日
(退院日)
第17病日第42病日
AST(17–44 U/L)871155730—
ALT(17–78 U/L)88631628647
ALP(0–89 U/L)888988759259103
GGT(≤14 U/L)1816181517
T-Bil(≤0.5mg/dL)4.83.31.00.40.4

※「—」は測定なし。

獣医師からのコメント

胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢内に粘液が過剰に蓄積し、胆汁が排出されにくくなる病気です。進行すると胆汁うっ滞や肝障害を引き起こし、さらに胆嚢壁の壊死や破裂、胆汁性腹膜炎など、命に関わる重篤な状態に進行する可能性があります。
初期には明らかな症状がみられないこともありますが、元気・食欲の低下、嘔吐、下痢、腹部の不快感などが認められることがあります。治療方法は病気の進行度や全身状態によって異なりますが、胆嚢の状態や臨床症状、血液検査所見などから外科治療が必要と判断される場合には、胆嚢摘出術が選択されます。
今回の症例では、血液検査で肝酵素およびT-Bilの上昇が進行していたことから、早急な外科的介入が必要と判断しました。術後は一般状態の改善とともに、血液検査の数値も徐々に改善しました。胆嚢粘液嚢腫は、早期発見と適切な治療方針の選択が重要な病気です。健康診断や画像検査で偶然発見されることもありますので、定期的な健康チェックをおすすめします。

担当獣医師:丸山純果先生

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